Q 退職の撤回に応じる必要があるのでしょうか?

【質問】

 

1か月後に退職予定の社員が、「退職するのを取りやめたい。」と言ってきました。

 

どうやら、次に転職する予定の会社が倒産してしまったようで、気の毒な感もありますが、当社としても代替社員を既に雇用を決めてしまっています。

 

法律的に、退職の撤回にはどのように対処すればよいのでしょうか?

 

 

【回答】

 

会社が、退職の承認をしている場合には、退職の撤回をすることはできません。

 

 

【解説】

 

社員が会社に勤めるということは、社員と会社との間で、社員が適正な労働力を提供し、会社がそれに対して対価を支払う、という契約(労働契約)を結ぶことです。

 

それに対して、社員が退職を申し出るとことは、社員が労働契約の解約を申し出て、それに対して会社が同意して、結果として労働契約が合意解約されることとなります。

 

 

これは、労働契約に限ったことではありませんが、一旦、契約の合意解約が成立した後は、当事者の一方の都合で解約を取消すことはできません。

 

つまり、退職の撤回は、労働契約の合意解約が成立した後は、社員は退職の撤回は出来ないし、会社もそれに応じる必要ありません。

 

 

問題は、どの時点で、合意解約が成立したとみなされるかです。

 

少し法律的な話となってしまいますが、労働契約では、一方の当事者が労働者で、もう一方を使用者と考えます。

 

ここで問題となってくるのが、事業主つまり社長は、もちろん使用者なのですが、使用者は、必ずしも社長だけとは限りません。

 

 

労働基準法では、使用者を

 

社長(事業主)又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者

 

と定義しています。

 

 

一般的には経営陣とイメージしてもらえばわかりやすいかと思いますが、難しいのが、何処までが「経営陣」に該当するのか、法律に基準がないのです。

 

例えば、法人登記されている取締役が、それに該当するか?と言われれば、必ずしもそうとは言えません。

 

法人登記はされていないが、執行役員のように、取締役と同等の権限を持っている社員もいますし、反対に法人登記されている取締役であっても、名前だけで実際は労働者と変わらない場合もあります。

 

つまり、使用者の範囲は、それぞれの会社によって異なってくるのです。

 

 

ところで、使用者の範囲のこれ以上の説明については割愛させていただき、ご質問に戻りますが、使用者の範囲は明確ではありませんが、先程も書きましたが、社長(事業主)が使用者であることは間違いありません。

 

ですから、社長が退職を承認していれば、労働契約の合意解約は成立することとなります。

 

 

もし、社長の承認が無いのであれば、個々のケースで判断していることとなります。

 

例えば、大企業では個々の社員の退職について、社長まで決済を求めないケースも多々あるでしょうから、そのような場合には、退職の決済を行っているしかるべき担当者が、その社員の退職を承認していれば、労働契約の合意解約は成立していると考えられます。

 

しかし、中小企業で取締役総務部長の肩書があっても、実際には決裁権が全て社長の場合には、その総務部長が退職を承認していても、労働契約の合意解約は成立したとみなすのは難しい場合も考えられます。

 

 

今回のご質問のケースでは、退職の申し出が、どのような人に出されているか不明なので、労働契約の合意解約が成立しているか否かの判断はできませんが、ただ、退職予定日や補充人員も決まっているので、退職の承認はされていると考えられるかと思います。

 

従って、法律的には退職の撤回には応じる必要はないかと考えられます。

 

 

ところで、労働者が退職を申し出る時に、一般的に「退職届」又は「退職願」といった文言を使います。

 

では、「退職願」と「退職届」の違いは何なのでしょう?

 

 

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【ここがポイント】

 

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「退職願」と「退職届」は、あまりその違いが意識されて使われてはいませんが、「退職願」と「退職届」には、法律的に違いがあります。

 

「退職願」の場合は、会社に対して退職を願い出ている、つまり、労働契約を解約したい申し出をしているに過ぎません。

 

ですから、今回ご説明しましたように、会社がその申し出を承認すれば、合意解約が成立、つまり、退職が認められたこととなります。

 

それに対して「退職届」は、労働者の一方的な意思表示であるため、「退職届」が、会社に到達した時点で、労働契約の解約、つまり、退職が成立したこととなります。(ただし、退職が成立するには、退職届が単に会社に届くだけでなく、社長又は決済人事権を持つ人に届く必要があると言えます。)

 

 

つまり、労働者側からみれば、「退職願」であれば、提出した後でも会社が承認されるまででしたら、退職の撤回のチャンスはありますが、「退職届」でしたら、提出した時点で撤回できなくなってしまうこととなります。

 

ただし、無用なトラブルを避ける意味でも、仮に労働者から「退職届」の形式で提出されても、労働者との話し合いの場を設けるべきかと思います。

 

 

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